住宅買い替え時の住宅ローン控除と3,000万円特別控除の選択は悩ましい

所得税

今住んでいる自宅について住宅ローン控除を適用しているとします。

で、その自宅を売却し、新たに自宅を購入する。

以下、

売却する自宅=旧自宅

新たに購入する自宅=新自宅

として話を進めます。

旧自宅の売却代金は旧自宅のローンの返済に充て、新自宅の購入については新たにローンを組む。

以上のような場合に、旧自宅の売却について譲渡益が発生するとして、その譲渡益から3,000万円を控除できる「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を適用するか、新自宅の住宅ローンについて住宅借入金等特別控除(新築の場合の住宅借入金等特別控除中古の場合の住宅借入金等特別控除)を適用するか、悩ましいところです。

旧自宅の譲渡益に対しては、その所有期間に応じて所得税率+住民税率で、14.21%から39.63%の税金がかかります。その譲渡益から最高3,000万円を差し引いてから税率を適用する制度が「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」です。

一方、住宅借入金等特別控除(=住宅ローン控除)は、年末時点の住宅ローン残高の1%相当額(最高40万円)を10年に亘って所得税額・住民税額から控除できる制度。10年後においても4,000万円以上のローン残高がある返済計画であれば、10年でトータル400万円の税額控除が受けられることになります。

ところで、旧自宅について「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を適用してしまうと、新自宅の住宅ローンについて住宅ローン控除の適用を受けることはできません。

なので、キャッシュの時間価値を無視すると、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を適用しなかった場合の譲渡益×税率で計算される税額が、400万円を上回るかどうかによって、いずれの制度が適用できるのかを判断すればよいことになります。パッと見。

ところが、ここに一つ落とし穴が。

旧自宅の譲渡益に「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を適用した場合、旧自宅に適用していた住宅ローン控除を遡及的に適用しないことに改めなくてはなりません。

というのも、その居住の用に供した年とその前2年・後3年の計6年間に、新自宅以外の住宅(つまりこの場合は旧自宅)に「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を受けていると、新自宅に住宅ローン控除の適用を受けることができないという規定になっているからです。

この規定から逃れるためには、「その前2年」について、住宅ローン控除を受けなかったことにしなければならないのです。具体的には修正申告を行うことになります。詳しくは、「居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例等の適用を受ける場合の修正申告」をご参照ください。

なので、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を適用しなかった場合の譲渡益×税率で計算される税額が、400万円+前2年間の住宅ローン控除額を上回るかどうかで、いずれの制度を選択するのが有利か、判断する必要があります。

なお、毎年40万円以上の所得税住民税が発生しない場合や、各年末の住宅ローン残高が4,000万円未満となる場合には、10年間での住宅ローン控除額の合計額が400万円に満たないことになりますので、その点も併せてご検討ください。


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